【ボクシング】相手のパンチで目を瞑ってしまう理由とは?~目を開けていられるのも、練習で身につく技術です

BOXING CLUBとは

ボクシングを始めたばかりの方で、
「パンチが来ると、どうしても目を瞑ってしまう」
という悩みを抱えている方も多くいることと思います。

マスボクシングで相手のジャブが顔の前を通った瞬間、ギュッと目を閉じてしまう。
ミット打ちの途中で、トレーナーが顔の横に軽くグローブを出しただけで、反射的にまばたきが出てしまう。

本人は見ようとしています。
でも、グローブが近づいた瞬間だけ、身体が勝手に反応してしまいます。

そしてそのあと、少し恥ずかしそうに、
「今、目つぶりましたよね」
と笑う方もいます。

でも、私はそこで「ダメですよ」とは思いません。
最初はそれで普通です。

顔に向かって物が飛んできたら、人間は目を守ろうとします。

まばたきが出る
首がすくむ
肩が上がる
身体が固まる

これは怖がりだからではありません。
身体が自分を守ろうとしているだけです。

ただ、ボクシングでは目を閉じた瞬間に、次が見えなくなります。

一発目を見失う
続けて来るパンチに反応できない
ガードが遅れる
避けたあとに姿勢が崩れる
返すタイミングもなくなる

つまり、目を瞑ること自体が悪いというより、目を瞑ったあとに全部遅れてしまうんです。
だから必要なのは、根性で無理やり目を開けることではありません。

「見ても大丈夫」
「ガードできる」
「避けられる」
「自分も返せる」

この感覚を、練習の中で身体に入れていくことです。


佐藤崇之(さとう たかゆき)

︎・25歳で運動不足解消・ダイエットを目的にイマオカボクシングジム(現BOXING CLUB渋谷)に入会
・運動嫌いが半年で20Kg以上のダイエットに成功し、ボクシングのみならず運動生理学や身体構造に興味を持つ
・脱サラしスポーツトレーナー養成学校に入学しアスレチックトレーナーを目指す。
・細かい技術や、戦いにおける戦術、心理的側面など知っているようで知らない内容のコラムを発信中
・「感覚」よりも「理論」で会員様と同じ目線での指導を心掛けております。


パンチで目を瞑るのは自然な反応

パンチが来た時に目を瞑ってしまうのは、初心者の方にはよくある反応です。

相手が本気で打っているわけではない。
強く当てようとしているわけでもない。
軽いマスボクシングで、きちんとコントロールされたパンチ。

それでも、グローブが顔の近くを通ると、反射的に目が閉じてしまうことがあります。
これは珍しいことではありません。

日常生活でも、急に顔の近くに物が飛んできたら、多くの人は目を閉じます。

それをボクシングを始めた瞬間に、
「絶対に目を閉じるな」
と言われても、いきなりできるものではありません。

なので、まずは自分を責めないことです。

「自分だけできていない」
「怖がりなのかな」
「ボクシングに向いていないのかな」

そう思わなくて大丈夫です。

顔の近くにグローブが来ることに慣れていなければ、身体が守りに入るのは当然です。

ただし、目を閉じると情報が切れます。

次に右が来るのか。
左が続くのか。
相手が前に出てくるのか。
自分は避けるのか、ガードするのか、打ち返せるのか。

その判断材料が、一瞬なくなってしまいます。
ボクシングでは、その一瞬がかなり大きいです。

だから、目を瞑る自分を否定する必要はありません。
でも、そのままでいいわけでもありません。

見ていられる距離
対応できるスピード
落ち着いてガードできる感覚

そこを練習で作っていくことが大切です。


初心者ほどグローブを追いすぎてしまう

目を瞑ってしまう人ほど、実はパンチを見ようとしています。

少し変に聞こえるかもしれません。
でもスパーリングに限らずマスボクシングの場面においてもよくあります。

パンチが怖い。
当たりたくない。
だから相手のグローブを必死に見る。

その気持ちはよく分かります。

ただ、グローブだけをじっと見ていると、かえって怖くなります。

グローブは、自分の顔に向かってくるものです。
それを近い距離で一点集中して見続けると、脳は強く危険を感じます。

呼吸が止まる
肩が上がる
首が詰まる
足が止まる
視野が狭くなる

そして最後に、目が閉じる

本人は見ようとしている。
でも、見方が近すぎるせいで、逆に身体が固まってしまうんです。

ボクシングでは、もちろん相手を見る必要があります。
ただ、拳だけを追いかければいいわけではありません。

拳だけを見ていると、パンチが出てから反応することになります。
それでは間に合わない場面が増えます。

初心者の方には、よくこう伝えます。
「グローブを追いかけすぎず、相手の顎から胸のあたりを広く見てください」

点で見るのではなく、面で見る。
拳だけではなく、相手全体の動きを拾う。

最初は難しいです。
どうしてもグローブに目が行きます。

でも慣れてくると、見えるものが変わります。

相手が前に乗ってくる
距離が半歩詰まる
構えの高さが変わる
急にリズムが止まる
打つ前だけ、空気が少し硬くなる

そういう変化が見え始めると、パンチの感じ方が変わります。

「いきなり来た」
ではなく、
「あ、そろそろ来るな」
に変わってくる。

この差は大きいです。
目を瞑らないためには、ただ頑張って見るのではなく、見方そのものを変える必要があります。


目を閉じる前に、身体はもう固まっている

パンチで目を瞑る人は、パンチが来た瞬間に目を閉じているように見えます。

でも実際には、その前から身体が固まっていることが多いです。

構えた時点で肩が上がっている
首が詰まっている
奥歯を噛んでいる
グローブを強く握りすぎている
足が床に張りついている
息が浅い

この状態でパンチが来ると、身体は動きません。

避けようとしても足が出ない。
ガードしようとしても腕が遅れる。
返そうとしても、相手はもう次の動きに入っている。

つまり、目だけの問題ではないんです。

身体全体がすでに「受けるだけの状態」になっている。
そこにパンチが来るから、最後に目が閉じてしまう。

だから、目を開ける練習は、目だけを頑張る練習ではありません。

首を固めすぎない
肩を上げっぱなしにしない
グローブを握りしめない
足を動かせる状態にしておく
そして、呼吸を止めない

特に呼吸は大事です。

パンチが来る前に息が止まっている人は多いです。
息が止まると、身体は固まります。
身体が固まると、反応が遅れます。
反応が遅れると、余計に怖くなります。

この流れに入ると、目だけ開けようとしても難しいです。

まずは、構えたまま軽く息を吐けること。
パンチが来ても、全身をロックしないこと。
足を完全に止めないこと。

これだけでも反応は変わります。
目を瞑らないためには、目を鍛える前に、身体を固めすぎないことです。


上級者はパンチではなくリズムを見ている

上級者が目を瞑らないのは、根性があるからではありません。

もちろん慣れはあります。
パンチが近くを通る感覚。
相手と向き合う緊張感。
距離が詰まる怖さ。

そういうものを、何度も経験しています。
ただ、それだけではありません。

上手い人は、パンチを目で全部追いかけているわけではありません。
もっと広く、相手のリズムを見ています。

前に来るタイミング
止まる間
呼吸の変化
距離の詰め方
打つ前の小さな沈み
攻撃に入る時の空気

こういうものを感じています。

初心者は、出てきた拳に驚きます。
慣れている人は、拳が出る前の流れを見ています。

だから、毎回びっくりしません。
「あ、来た」
ではなく、
「来ると思っていた」
に近い感覚です。

ここが大きな違いです。

ボクシングは、パンチだけを見る競技ではありません。
相手の動き、間合い、リズムを感じ取る競技です。


もちろん最初からそんな見方はできません。
でも、グローブだけを追いかける癖が抜けてくると、少しずつ相手全体が見えてきます。

パンチそのものより、パンチが出る前の流れを見る。
この感覚が出てくると、目を閉じる回数は自然に減っていきます。


目を瞑らなくなるための練習方法

目を瞑らなくなるために必要なのは、怖い経験を増やすことではありません。

強いパンチを受ければ慣れる。
無理やりスパーリングをすれば克服できる。

そういう話ではないです。

むしろ初心者の場合、怖い経験ばかり増えると、目を閉じる癖が強くなることもあります。

大事なのは、成功体験を積むことです。

「見えた」
「ガードできた」
「避けられた」
「軽く返せた」

この感覚を練習の中で増やしていく。

最初は、相手に本当にゆっくりジャブを出してもらいます。
速くなくていいです。
むしろ最初から速く出すと意味がありません。

目的は避けることではなく、目を閉じずに最後まで見ることです。

ゆっくりジャブを出してもらう
目を開けたまま見る
軽くガードする
頭を少し外す
余裕があれば軽く返す

この順番で十分です。

顔の近くでグローブを止める練習も効果があります。

当てる必要はありません。
ゆっくりグローブを出して、顔の手前で止める。
それを目を開けたまま確認する。

最初は怖さがあります。
でも、当たらない距離だと分かると、視界を切らずにいられる時間が伸びてきます。

あとは、軽いマスボクシングです。
初心者のうちから強くやる必要はありません。

軽く
当てない
見ることを優先する
相手の動きに慣れる
避けたら軽く返す
止まらずに動く

これで十分です。

目を瞑らなくなるために必要なのは、我慢ではありません。
段階を踏むことです。

まずは、顔の前を通るパンチを見られるようになる。
次に、近い距離でもガードできるようになる。
その次に、スピードが上がっても反応できるようになる。

こうやって範囲を広げていく方が、無理にスパーリングをするより確実です。


まとめ:目を開けることもボクシングの技術

パンチで目を瞑ってしまうのは、恥ずかしいことではありません。

顔に向かって物が飛んでくれば、人間は目を守ろうとします。
それは正常な反応です。

ただ、ボクシングでは目を閉じた瞬間に、次の動きが見えなくなります。
だから練習で変えていく必要があります。

大事なのは、根性で我慢することではありません。

グローブを追いすぎない
呼吸を止めない
身体を固めすぎない
相手の上半身を広く見る
ゆっくりした攻防で、視界を切らない練習をする

一つずつでいいです。

目を瞑る人は弱い。
そう見られがちですが、私はそう思いません。

ただ、顔の近くにグローブが来ることに慣れていないだけです。

そして慣れは、正しい練習でちゃんと作れます。

見ても大丈夫。
ガードできる。
避けられる。
自分も返せる。

この感覚が身体に入ってくると、パンチが来た時の反応は変わります。

目を開けて相手を見る力も、ボクシングの大切な技術です。
才能ではありません。
練習で身につくものです。



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